自分
自分が何者なのかは、そりゃ誰しも分からないと思う。その上俺は、自分が何者になりたいのかも、分からなくなってきた。色々がぼやけて、灰色になる。テレビは鮮やかで、木々は青々としてた筈だ。
誰かに、救ってほしい。みんなもそう思ってる筈。それでもなんとか、電車の揺れに耐えながら立ち、未完全な歩道を踏みしめる。誰もが、それで精一杯だ。他人にかける思いなんて、ない。ないのに。
俺は、一人でフラフラと立っていたかった。何にも寄りかからず、そこに立ち、誰かに寄りかかられることを望んだ。だけど、そんなものはすぐに力尽きる。しゃがみこみ、蹲る。そんなもの、目にかける奴なんていりゃしない。見て見ぬ振りをするのみ。当たり前だ。自分のことで一杯一杯なのに、そんな余裕のあるわけがない。
俺は、助けて欲しそうな奴になるべく声をかける。居眠りで、駅を寝過ごしそうになる奴。見て見ぬ振りで心を痛めるのだから、身勝手な行動だ。他人を気遣える社会ってのは、来ることがないんだろうな。なんて、思いながら。