割れたiphone
蛍光灯の光で満たされた部屋のテーブルには、真ん中からパックリと割れ画面に蜘蛛の巣のようなヒビが入ったiphoneが置かれている。
俺は昔親に買って貰ったiphoneを、床に叩きつけて壊したことに、べつに何の罪悪感も感じていなかった。それどころか、内に雪崩れ込むようなイライラの感情も、万華鏡のような矛盾した感情も、しんと息を潜め、俺はこれからどうするべきかを冷静に考えていた。
俺はあまり怒りの感情を表に出さない人間だったが、それは出さないだけの話だった。
積もり積もった感情は内側へ牙を剥き、俺は何回かタバコを腕に押し付けた。
ケロイド状になった傷跡は黒々とした灰からピンク色の肉が覗き、どこか艶かしさがあった。
そんなことを思い出しながら、今の自分と比較してみると、今の俺は確かに、怒りが外に向かっていた。これが進んだら人を傷つけかねない。そう思った。
だから、俺は入院することにした。通院先の病院に電話してみると、来週にはベッドが空くらしい。
理性的な判断が下せる内に決めてしまったほうが、おそらくいいのだ。