他人のせい

 他人のせいにするってことは大事なことなんだ。分かるか？

例えば、俺なんかは、全部自分のせいにしちまってた。

他人が怒るのも、自分のせい。どこで地雷を踏むなんて分かったもんじゃないのにさ。

園児の頃、先生に毎日のように怒られてた。標的にされてたんだな。それだって、不思議と受け入れちまってる。毎日あんなに騒がれたら、そら、当たりたくもなるわな。

俺は、人間が好きだから、みんなのことが好きだ。嫌いな人なんかいないんだな。普通だったら、自分を傷つける人を嫌う。防御のためだな。でも、俺にはそれがなかった。受け流すことができなかった。そうしたら、そりゃ、死んでしまうわな。全て、自分のせいなんだから、自殺に走る。

かといって、他人のせいにしすぎる奴は、他人を殺してしまう。そうなんだ、要は、バランス感覚。殆どの人ができているが、たまにそれを崩しちまう奴がいる。ニュースを見てりゃ分る筈だ。だから、そんな奴にたまに共感しちまうことがあるんだ。容疑者側に立って見れる奴なんて、どれだけいるだろうか？

俺は、投げ捨てることを覚えた。俺も悪いし、相手も悪い。そんなのもいいが、相手を嫌いになりたくない俺は、誰のせいでもないと思うことにした。でも、これじゃあ、感覚と悟性が乖離しちまうから、やっぱり、両方悪い、と思うことにした。これで、少しまともな人間に近づけた筈だ。皆が考えないで過ごせてるのに、俺は、どれだけ些細なことまで考えながら生活していかなければならないんだと思うが、どうやら、これが俺の性らしい。それすら、受け入れられるように、生きる。生きるしかないのだから。